【漫画】ラオスの栄養課題ー新米国連職員のぱにゃにゃん日記 Vol.10

サバイディー!リョーヤです。

前回までの「新米国連職員のぱにゃにゃん日記」では、ラオスで出会ったビックリな食事をご紹介しました。

今回は、僕がラオスでどんな仕事をしているか、ラオスにどんな課題があるのかについてご紹介したいと思います。

さて、これまで「新米国連職員のぱにゃにゃん日記」では、アフリカを中心に世界中で出会った食べものや異文化について紹介してきましたが、今後はこうした国際協力の仕事を行うなかで出会う課題についても分かりやすくご紹介できればと思っております。

ラオスが抱える最も深刻な栄養課題のひとつは、5歳未満の子どもの慢性的な栄養不良です。具体的にいうと、この栄養不良は「発育阻害(stunting)」と呼ばれ、子どもの年齢に対して適切な身長に達していない状態(低身長)のことを指します。(表現がイメージしやすいので、ここからは「低身長」を使います)

最新のデータでは、ラオスの5歳未満の子どもの低身長の割合は33%で、実に3人に1人が低身長ということになります。

低身長の子どもがそのまま成長していくと、大人になっても低身長の状態が続きます。そして低身長の母親からは低身長の子どもが生まれやすいといわれており、このような状態を「貧困の世代間継承(Intergenerational Transmission of Poverty)」と呼ぶこともあります。

私たちの仕事は、この栄養不良の連鎖を断ち切ることにあるわけです。では、どのようにこの負の連鎖を断ち切るのでしょうか?

様々なアプローチがあるのですが、栄養不良の解決において忘れてはいけないのが、「人生最初の1000日(First 1000 Days)」です。

この1000日は、母親の胎内にいる期間(270日)と2歳までの2年間(365日×2年)を足し合わせた数字で、この期間にどれだけ適切な栄養を摂取できるかによって、その後の子どもの栄養状態や認知機能の発達を大きく左右するといわれています。そしてこの1000日間は、不可逆である(irreversible)ともいわれていることから、栄養改善プログラムにおいてはこの「人生最初の1000日(First 1000 Days)」を意識したアプローチが大切になります。

「人生最初の1000日(First 1000 Days)」のような科学的なエビデンスもある理論を意識することは当然必要ですが、同時に大切なのが、その土地の文化や慣習を意識したアプローチです。そしてこれが最も栄養改善を難しくさせていると個人的には感じています。

ラオスは公式な統計だけでも50の民族がおり、それぞれが異なる食文化や価値観をもっています。ある民族は、赤ちゃんの出産前後に母親は肉を摂取しないといった慣習があり、そのことが母親と子どもの栄養(特にタンパク質)に影響を与えている可能性もあります。

このような状況の場合、伝統的な慣習ではなく栄養に配慮した行動への変化を促すというアプローチも考えられはしますが、一筋縄ではいかないことがほとんどです。私たちだって、自分たちの食生活を変えることは難しいですよね。「栄養にいいからこれを食べましょう!」といっても、今まで食べてこなかったものを突然食べたりすることはそう簡単なことではないと思います。

では、どのようにこの問題を解決するのか?

それは僕もまだ答えがないのですが(笑)、食生活を大きく変えることなく、そしてその土地で採れるもので不足している栄養素を補うということが基本アプローチになってくると思います。タンパク質不足のケースですと、豆類などの摂取を通常時より増やすことで補うといった方法が考えられます。

と、ここまでいろいろ書いてきましたが、栄養課題の解決は本当にケースバイケースで、まずはその現状を把握するため、「現場に足を運ぶこと」がなによりも重要だと僕は考えています。

ときには道なき道を何時間もかけてたどり着き、そこで実際に生活習慣や食事、水まわりの衛生状態や食べものへのアクセスなどを確認することが必要になります。

僕たちの仕事が少しイメージできましたでしょうか?子どもの低身長は大きな課題のひとつですが、ラオスには他にも課題がいっぱいあるので、またの機会にぜひご紹介できればと思います。


漫画のイラストについては、食を旅するイラストレーター・マンガ家の織田博子さんにご協力いただいております。

https://odahiroko.jp/front/

ユーラシア大陸を横断したり、世界各地のおばちゃんやおじちゃん、家庭料理を描いた織田さんの漫画が大好きだったので、「新米国連職員のぱにゃにゃん日記」連載にあたり、織田さんにご協力いただけることをとても嬉しく思っております。

海外旅行や世界のローカル料理が好きな人にはたまらないと思いますので、織田さんの書籍もぜひチェックしてみてください!

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