【漫画】国際協力をしないという勇気ー新米国連職員のぱにゃにゃん日記 Vol.19

サバイディー!リョーヤです。

前回の「新米国連職員のぱにゃにゃん日記」では、僕が学生時代にJICA海外協力隊(旧:青年海外協力隊)として赴任したザンビアでの経験から、JICA海外協力隊に参加してよかったこと、そしてそこで決意した生涯の夢についてお話しました。

今回は、ザンビアから帰国後、大学を一年間休学して教育支援活動に取り組んだ南米パラグアイでのお話です。

協力隊としてザンビアでの活動を終え、できないことだらけだった自分にへこみながらも、「このままではいけない…!もっと国際協力の現場での経験を積みたい」と思い、思い切って大学を一年間休学。大学のプログラムの一環で一度訪問していた南米パラグアイに滞在し、当時僕が所属していたゼミで進めていた学校建設プロジェクトのお手伝いをすることになりました。

学校建設に必要な費用は、学園祭での物販、そしてファンドレイジング活動によって貯め、必要な予算を無事に確保することができました。「よし!途上国の村に学校を建設するぞ!」というつもりでずっとプロジェクトに関わっていました。

でも、村の全世帯をまわって世帯調査やインタビューをし、何度も村の人たちと議論をした結果、現地の様々な事情から「学校建設はしない」という決断をし、村の人たちにそのことを伝えました。

会議の途中から雨が降り出し、濡れながら村の人たちの悲しい顔を見たことを今でも覚えています。

当時は僕たちも学生だったし、心のどこかで「なにかカタチに残したい」「国際協力をしたい」っていう自分勝手な気持ちが先行していて、しかも建設に必要な費用も応援してくださる支援者の方々のおかげで十分に集まっていたので、引くに引けない気持ちもあり、パラグアイ滞在中、夜中まで何度も何度も「どうすることが村の人たちに一番いいのか」、プロジェクトメンバーのみんなと議論し続けました。

そして最後にくだした決断は、「学校建設をしないこと」でした。

国際協力の現場にいると、そこは日本とは違う環境なので、ないものばかりが目立ちます。そして「学校がほしい」「病院がほしい」などと、現地からの”ニーズ”といわんばかりの要望をもらうこともたくさんあります。

ぼくたちはどうしても「なにをすることが一番いいのだろう?」と、支援をすることを前提で思考しがちですが、もうひとつ、常にもたなければいけない大切な選択肢があります。

それは、「やらない」という選択肢です。

国際協力をしようとしていて、「やらない」なんて変な話かもしれませんが、「やらない」選択がより良い未来をつくるとしたら、やらない方が良いに決まってる。

ただ、国際協力の仕事は、その結果がすぐに見えにくいものです。やらなかった結果がよかったかどうかは、数年後、あるいは数十年経たないとわからないこともあると思います。

5年前、学校建設はしませんと告げた南米パラグアイの村に帰ってくる機会がありました。学生時代以来、4年ぶりの訪問でした。

村の人たちは盛大に迎え入れる準備をしてくださっていて、みんな覚えててくれて、子どもたちはすっかり大きくなってて、当時の何もできない自分を延々と続く赤土道を歩いて思い出して、みんなの前で挨拶をしたときにいろんな感情が湧き出てきて泣いてしまいました。

学生時代に何度も何度も往復したパラグアイの村の赤土道

そして4年ぶりに帰ってきて、当時この村で行われていた生活改善プロジェクトの会議の様子を見させていただきました。

これはもう、短い時間だったし、本当にぼくの感覚でしかないのだけど、4年前よりみんな生き生きと村の今後について議論している姿をみれて、たらればですが、あのとき「学校建設をしない」という選択をしたことが、変な軋轢も生まず、ひょっとしたら村の生活にはプラスだったのかなとも思えて、あのときくだした「学校建設をしない」という決断は正しかったのか、ずっとずっと引きずっていたけれど、パラグアイのこの村に限らず、なにかを与えないことが成功につながることもあるのかもしれないと、新しい発見、気づきを村の人たちから与えてもらいました。

子どもに嫌がられる僕(笑)

ものごとを良い方向に進める方法は、なにかをやること、行動を起こすことだけではない。

なにかをやらないこと、寝かせた状態にしておくことが、ものごとを良い方向に動かしてくれることもある、かもしれない。ということを途上国の人々から学びました。

やらない選択がより良い未来をつくったかもしれない現場を見て、そのときの一番の選択肢がそうだとしたら、「支援をしない」という勇気も持とう、と思いました。

国際協力に限らず、ぼくたちはせわしなく続く日々のなかで、たくさんの選択肢を目の前にする機会があると思います。

そんなとき、あれもやらなきゃ…… これもやらなきゃ…… と、なにかをやることが前提で思考がスタートしていることに気づきます。

それを「やらない」という選択肢はないのか? 一度たちどまってみるのもいいんじゃないでしょうか。

みなさんは「国際協力」ってなんだと思いますか?
何かを「与えること」でしょうか?

もちろん、その状況によって答えは異なってくるのかもしれません。例えば、紛争や自然災害のような緊急支援の現場では、「与えること」が国際協力だと思います。

一方、そうではないいわゆる開発の現場では、僕は常に「その地域の人が持つ力を最大限に発揮できるようにすること」を意識して仕事をしています。

みなさんの「国際協力とは?」に対する答えもぜひ聞かせてください!


漫画のイラストについては、食を旅するイラストレーター・マンガ家の織田博子さんにご協力いただいております。

https://odahiroko.jp/front/

ユーラシア大陸を横断したり、世界各地のおばちゃんやおじちゃん、家庭料理を描いた織田さんの漫画が大好きだったので、「新米国連職員のぱにゃにゃん日記」連載にあたり、織田さんにご協力いただけることをとても嬉しく思っております。

海外旅行や世界のローカル料理が好きな人にはたまらないと思いますので、織田さんの書籍もぜひチェックしてみてください!

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